「社会調査」のウソ リサーチ・リテラシーのすすめ/谷岡 一郎

社会調査・定量分析を行うなら、一度は読んでおきたい本。

この国の調査の過半数はゴミである。ゴミのような調査しかしないから、ゴミのような結果しか出てこない。いわゆるGIGO(Garbage In, Garbage Out)。新聞や雑誌といったメディアの記事にもゴミがいっぱい。だから、私たちはゴミをゴミと見分ける力、リサーチリテラシーを身につけなくてはいけない。
では、ゴミを見分けるにはどうすればいいか。まずは、調査方法が適切かどうかをチェックする必要がある。そのためには、次の三点は最低でもチェックしておく必要がある。

  • 何を目的とする調査か(主催者は誰か。仮説は何か)
  • サンプル総数と有効回答数は何人か。どう抽出したか。
  • 導き出された推論は妥当なものか。

個人的には、適切でないサンプリングを行っているリサーチが多いように感じる。正しいサンプリングだと言えるためには、以下の4つの条件を満たしていればよいだろう。

  1. 十分な数がある
  2. 母集団が一般的に定義されている
  3. アンケートの)回収率が高い(目指せ100%。最低でも60%はないと・・・)
  4. 確立標本である

「確率標本である」とは、具体的に言うと

  • 母集団のどれか一つが選ばれる確率はどれも同じ
  • 母集団のどの要素を選んでも、最終結果に与える影響が同じ

ということ。

本書の中でも、意図的に(もしくは天然で?)偏ったサンプルから誤った結論を導き出しているリサーチが数多く出てくる。これは、本当にサンプリング手法を知らなかったから、というわけではなくて、ほとんどのケースは「結論ありき」のリサーチを行っているからだと思う。たまたま目に付いたサンプルから結論が思いついてしまったため、形式上リサーチを行ったように仕立てているとか。とはいうものの、思いこみ・バイアスを完全に排除することもなかなか難しい。「この調査方法・調査結果は本当に妥当か」と自問自答し続ける姿勢を持ち続けることだ大切なのだろう。
著者は本書の冒頭で「この本は少々過激な内容である」と書いてあるが、現実をありのままに書いたらこうなった、というだけであって、別にわざわざ過激に書いたわけではないだろう。実際のところ、世の中のリサーチはこんなにもひどい、というのが現実だと私も思う。
統計学の知識が多少あった方がリサーチリテラシーが上がることは確かだろう。だが、統計学を知らなくてもサンプリングが適切かどうかくらいはチェックしておいた方が身のためだ。それも無理なら、一度はこの本を読んでおくべきだろう。