さらば財務省!

さらば財務省! 官僚すべてを敵にした男の告白

さらば財務省! 官僚すべてを敵にした男の告白

筆者が大蔵省に入省してから小泉・安倍内閣を経て退官するまでの間に見た官僚の実態を赤裸々に告白した本である。
普段縦割りで縄張り争い意識が強い官僚たちが、既得権益の危機が起きると一致団結する姿には、何か物悲しいものを感じてしまう。不思議に思ったのは、大蔵省官僚でも数字に弱い、ということ。言われてみれば、金融監督庁に転じた私の会社の同期も、確かに数字には強くなかった気がするが・・・

物語は、安倍総理辞任の実情について、から始まる。
安倍総理については、改革を投げ出して突然辞任した政治家、という程度の認識しかなかったのだが、どうもそうではなかったらしい。小泉との比較をするに、政治家としては立派だが、官僚を相手にするには実直すぎたことが改革が進まなかった一因だったということがわかる。

筆者がコンテンツ・クリエータとして重要な役割を果たした小泉・竹中の改革については、多くのページが割かれている。官僚との戦い、竹中平蔵氏との関係など、改革の内部にいたからこそ書ける話が満載で、非常に興味深い。
筆者は官僚の身でありながら、(普通の)官僚と対立するような改革案を手がけることが出来たのには、ひとつは筆者が官僚世界で言うところの「変人」であったことが大きいのだろうと思う。官僚の主流に属さなかったこと(本人は属する気もなかっただろうが)で、外部から問題を見る目を失わなかったことが大きかった。もうひとつの要因としては、筆者自身も霞ヶ関に染まるつもりもなく、いつ官僚を辞めても良いくらいの気持ちだったので、改革にフルコミットすることが出来たという点があるだろう。

特別会計の積立準備金、いわゆる「埋蔵金」の実態についてもひとつの章を割いて述べられている。私が埋蔵金について知ったのは、4/11の日経朝刊「経済教室」の筆者のコラムを読んだからであった(それが本書を読むきっかけにもなったのだが)。
一般企業でこのような過剰な準備金を引き当てていたら、投資家・ファンドからの批判を浴びることになるだろうに。市場基準・世界基準で物を考えずに霞ヶ関基準でしか物事を判断できないのだろう。そういう意味では、埋蔵金の話はJ-Powerの話にも通ずるところがあるような気がする。