若者はなぜ3年で辞めるのか?年功序列が奪う日本の未来/城 繁幸

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)
私が通っている社会人大学院の研究プロジェクトとして、「再生局面にある企業におけるリーダーシップ」についての研究を行おうとしている。私は、再生局面でのリーダーシップを、特に伝統的な日本企業において発揮する際の特徴、発生する問題点についての考察を深めたいと思っている。その参考に少しでもなればと思い、買ってきたのがこの本。
サブタイトルにあるように、本書は日本的経営の特徴の一つである年功序列の様々な問題点を明らかにしている。近年世間で言われるようになった「格差」の本質は年功序列が生み出す世代間格差にあるという。年功序列の本質は「若いころの頑張り(若年層のタダ働き)に対する報酬を将来の出世(ノンワーキングリッチ)で支払う」ことにある以上、年功序列型社会には必ず世代間格差が存在する。世代間格差は年功序列制度上、昔も今も必然であったのだ。90年代以前に世代間格差が表面化してこなかったのは、日本経済が右肩上がりで成長していたからであって、経済成長と世代間格差の関係が一番ちょうどよかった、一番おいしい思いをした世代が団塊の世代なのだろう。
バブル崩壊後経済成長が落ち込み続けている今、年功序列制度の負の側面である、世代間格差が表面化してきている。バブル世代が年次的に管理職となってきており、会社内に管理職があまりに余りまくっている。このように上の世代が詰まってしまっている今、若者が年功序列制度の中で出世していくことは非常に困難な状況にある。世間で言われている金銭面の世代間格差(年金問題等)のみならず、仕事のやりがいという面においても、格差は存在する。
だから、若者は将来に絶望し、会社を辞めてしまう。若者が会社を辞めるのは、決して彼らの根性がないとか我慢が足りないとかいうわけではない。きわめて合理的な判断をすれば、伝統的な日本企業から早い段階で辞めてしまうのは当然のことなのだ。
私はバブル崩壊後の就職氷河期世代なので、今の若者の「3年で会社を辞めてしまう」行動を強く支持する。私と同じかそれより下の世代の人には、本書の最終章の著者の言葉を聞いて欲しいと思う。

働く動機がお金や地位ではなく、最低限の賃金さえあればよいと思うなら、なおのこと企業内のレールに残るべきだろう。ちょっと残業が多いのが玉に瑕だが、終身雇用は長い目で見れば気楽な世界だ。
ただ、いまの自分に違和感を覚えている人間であれば、まず自分の心の動機に耳を傾けるべきだろう。自分が望むものは、少なくとも今のレールの上にはないはずだ。
「若者はなぜ3年で辞めるのか」 P220
自分の胸の奥にある動機に従うか、それともそんなものは忘れて、昭和的価値観に身をゆだねるか。
決めるのは上司でも友人でも親でもない。自分自身だ。
「若者はなぜ3年で辞めるのか」 P224