駆け出しマネジャーアレックス リーダーシップを学ぶ/マックス・ランズバーグ

広告代理店の新任CEOアレックスが、様々な問題に直面しながらも、リーダーシップを発揮し、変革をリードしていく様子を物語調にまとめている。とても読みやすい一冊。リーダーシップとは何なのか、変革をリードしていくためにはいつ何を考え行動していかなければいけないのか、について分かりやすくまとまっているし、ドラマ仕立てになっているから、「自分の職場だったらこうだな・・・」というイメージがつきやすい。リーダーシップについて初めて学ぶ人、管理職になりたての人にお勧めできる一冊だと思った。

本書では、リーダーシップを以下のように定義している。

リーダーシップ=
ビジョンを掲げる(=未来の地図を描く)
部下のやる気を引き出す(=エンジンに点火する)
イニシアティブに弾みをつける(=ギアをトップに入れる)

ビジョンは従業員の心に響き、心の底から信じ切れるものでなくてはならない。そのようなビジョンを描くためには4つの原則がある。


1. わくわくするストーリーがある:実態に根ざしつつもよりよい未来を約束するもの。そして、名文句の寄せ集めではなく、自分の言葉で語られるもの。

2. ポイントを押さえており印象に残る:優先順位を明確にし、本当に必要な変革に的を絞る(散漫な印象を与えないようにする)。

3. 意義がある:やりがいを感じる、崇高な目的、高い価値観を掲げる。

4. 心に残る:新しい物の見方、新しい展望を与える。短く、口に出しやすい標語。


ビジョンを理解し変革の必要性を認識させるだけでは組織は動かない。全員が表向きは変革の必要性を認めていても、自分のやり方を変えたい人は誰もいないから。だから、トップ自らが模範を示す等、公式・非公式なメッセージを駆使して、ビジョンの深い理解とやる気の引き出しを行わなくてはいけない。そして、スモールサクセス・クイックヒットを積み重ねることで刺激を絶え間なく与え、従業員のやる気を確固たるものとしていくことが重要となる。特に変革実行者として外部から来た場合は、組織の一員としてしっかり入りこみ、早めにスモールサクセスが出るように仕掛けることで、従業員から早めに信頼されるように、計画立てて物事を進める必要があるだろう。

リーダーシップを発揮するだけがリーダーの役割ではない。リーダーが果たすべき役割は、本書によれば以下の6つがある。


1. リーダー:変革を指揮する、ビジョンを掲げ、部下のやる気を引き出し、イニシアティブに弾みをつける。

2. 進行役:議題を設定し、活発な議論を促す。

3. スポークスマン:社内外のステークホルダーに対し、組織を代表して話す。

4. コーチ役:能力を十分発揮できていない社員に対し、スキル開発を支援したりする。

5. 実行役、マネージャ:進捗チェック

6. 参加者:自分以外の人が主導するプロジェクトに必要に応じて参加する


リーダーはすべての判断を下すに十分な時間を持ち合わせているとは限らない。優れたリーダーなら、積極的に権限移譲を行うことで、自分が関与すべき課題に集中できる環境を作り出せるものである。権限委譲をきちんと行うことで、部下の成長と自分の付加価値向上を同時に達成できるのだから、やらない手はないはず。

最後まで読んで気付いたのだが、この本はシリーズ化されているらしく、この「リーダーシップ編」以外にも「コーチング編」「モチベーション編」と続くらしい。が、大学院のライブラリにはシリーズのほかの2冊は置いていなかったなあ。いつか時間があるときに都立図書館で借りることにしよう。