いまは見えないものを見つけ出す 発想の視点力/三谷 宏治

世に良く言う「発想法」。KJ法に代表されるような「発散と収束」ではジャンプした発想は得られない。自分たちの頭に頼っているだけの「発散」ではダメで、「発見する力」「発見する方法論」が必要だと著者は説く。その方法論として挙げているのが、発想を飛ばすための3つの視点、「比べる」「ハカる」「深堀る」の3点だ。

<1:比べる>
比べる視点には4つある。

  1. 矛盾を探す
  2. 不変・変化を探す
  3. 例外と比べる
  4. 周縁・その他と比べる

ユニークな答えを発見するためには

  • 共通点ではなく、矛盾・変化・不変を見つける
  • メジャーではなく、マイナーなものを比べ、その差の理由を見つける

ことが必要で、そのためには上述のような視点が必要だということだ。共通項にはとびぬけたものはない。例外や矛盾から逃げず、それらを真摯に見つめ、なぜそれらが例外・矛盾なのかをトコトン考える。ジャンプした発想を生み出すには、こういう姿勢が重要なのだと感じた。また、文中の例に出てくる「Undo分析(**しない人分析)」という視点は是非自分も取り入れていきたいと感じた。

<2:ハカる>
対象はどうあれ、定量化して客観的に数字で見ること。数字にしなくても、あいまいなものを具体化できれば、それでも良い。ハカる視点には以下の3つがある。

  1. 行動でヒトをハカる
  2. 目利きのカンで未来をハカる
  3. 塊をバラしてつなぎ直してハカる

「行動でヒトをハカる」というのは、言葉(インタビューやアンケート)に頼らず、ヒトの行動そのものに尋ねること。ヒトが環境を気にしているかどうかは、「環境を気にしている」という言葉ではなく、具体的な行動(本当にエコバックを持って買い物に行っているか、とか)で判断すべき、ということ。行動を観てユーザーを調査する手法を「エスノグラフィー手法」と言うのだそうだ。そうやってヒトの行動をハカることで

  • 資源配分:ヒトは何に一番時間やお金を費やしてきたか
  • トレードオフ:そのヒトは何を選んで何を捨ててきたのか

がわかる。この2つをじっくり見ていけば、その人の大事なことが何か、わかるはず。

<3:深堀る>
ここでは、筆者がJAH法と呼ぶ、空間視点で見る発想法が紹介されている。方法としては

  • 「軸」:まず、ある対象物に対する軸(属性・切り口)を考える
  • 「値」:対象物が軸の中でどういう値をとっているかを考える
  • 「巾」その値がとりうる値をすべて考える

という順で考えるもの。このやり方、ちゃんとした「軸」を出せれば強力だろうが、まともな「軸」が出ないと悲惨な結果に終わりそうだなー。ただ、軸が出せれば、「値」「巾」のところでオプション出しの漏れはでにくいやり方なので、効率がいいのだろうと思う。私は3×3マトリクスを使ったアイデア出し手法(なんというやり方なのかは知らない・・・)をよく使う。ブレスト的に発想を広げるには良いやり方だと思っているが、広げ方が十分かどうかが分かりにくいのが難点。両方の手法を使えれば、より効率的にアイデア出しができるように思う。